欧州で深刻化する自動車盗難:業界が今すぐ取るべき対策とは
英国では、4分に1台のペースで自動車が盗まれている—これは最近の The Economistの記事が報じた数字です。組織犯罪ネットワークの拡大や、盗難車の海外輸出を目的とした犯行の増加を背景に、英国の自動車盗難件数は過去10年間で74%も増加しました。保険料の上昇や経済的損失を含めると、自動車盗難による年間被害額は17.7億ポンド(約3,700億円)に達すると推計されています(ソース)。
なぜこれほど盗難が急増しているのでしょうか。その大きな理由は、テクノロジーの進化です。ここ5年ほどでクルマは急速にコネクテッド化し、ソフトウェアによる機能制御が一般化しました。一方で、この変化により新たなセキュリティ上の弱点が生まれ、テクノロジーに精通した窃盗犯が窓を割ることなくものの数秒で車を盗難するケースが増えています。盗まれた車両は、SUVや人気モデルであれば12時間以内に港に運ばれ、ペルシャ湾岸諸国やアフリカ向けの輸出コンテナに積み込まれてしまうことも珍しくありません。
ヨーロッパで人口当たりの盗難率が最も高い国はフランス、ギリシャ、イタリアです(下記表参照)。英国は全体の盗難件数こそ多いものの、人口比では前述した国々ほど高くはありません。また、ルクセンブルクのように小さい国でも、人口当たりの盗難率は極めて高い点は注目に値します。
| ランク | 国名 | およそ10万人当たりの盗難件数 | 1日当たりの盗難件数 |
| 1 | フランス | 248 | 451 |
| 2 | ギリシャ | 228 | 63 |
| 3 | イタリア | 227 | 369 |
| 4 | スウェーデン | 206 | 60 |
| 5 | ルクセンブルグ | 162 | 3 |
| 6 | オランダ | 156 | 78 |
| 7 | 英国 | 142 | 268 |
ソース: (Aviation.Direct, BalkanView)
統計を見ると、自動車盗難のリスクは車種によって大きく異なることも明らかになっています。 例えばフランスでは、最も盗難リスクが高い車種は、登録台数の多い一般的な車種と一致する傾向があります(chanoine.fr)。しかし、これは他国でも同様とは限りません。特にサイバー手口による盗難では、「攻撃のしやすさ」が重要な要因になります。サイバーセキュリティ対策が不足している車種は、リレーアタック、OBDハッキングなどの高度な手口に対して脆弱です。また、ブラックマーケットの需要も大きな影響を及ぼします。例えば、中古部品としての需要が高い車種や、アフリカや東欧での輸出価値が高い車種は、ターゲットとなりやすい傾向があります。
地域別の傾向を見ると、西欧および北欧ではリレーアタック、OBD、CANインジェクションといったサイバー盗難手法がより一般的です。一方で、南欧(イタリア、ギリシャ)では、窓の破壊や鍵のこじ開け、持ち去りといった従来型の盗難手口や、車両の部品を目的とした盗難が依然として多く見られます。特に、イモビライザーが搭載されていない古いモデルは狙われやすい状況です。
キーレス車両盗難の進化
自動車盗難の歴史は、自動車の歴史と同じといえます。カーアラームからイモビライザー、スマートキーまで、自動車業界は常に窃盗犯との“いたちごっこ”を続けています。車両技術やセキュリティ技術が進化し続ける限り、この攻防は今後も続くでしょう。自動車メーカーは、盗難につながるソフトウェア脆弱性を検知・修正し続ける一方、金銭目的の窃盗犯は新たな手口で最新のセキュリティ対策を回避しようとします。
現在の自動車サイバーセキュリティ領域で最大の課題のひとつが、サイバー手口による自動車盗難の防止です。キーレス技術をはじめとするスマート・コネクテッド機能の普及により、車両のサイバーリスクは大きく拡大しています。ダークウェブで入手できる電子デバイスを使い、現代の車両に潜む脆弱性を容易に悪用できてしまう状況は、車両オーナー、自動車メーカー、保険会社、そしてフリート運用者にとって深刻な問題となっています。
ヨーロッパで一般的なサイバー盗難手法としては、CANインジェクション、OBDポートハッキング、キーレスエントリーの悪用(リレーアタック)があります。CANインジェクション攻撃は、フランス、オランダ、英国、スウェーデンで特に増加しています。この手口では、窃盗犯がヘッドライトやバンパー付近にアクセスし、CANバス配線に小型デバイスを接続して「エンジン始動」信号を送ります。これにより、キーもイモビライザーも30秒以内にバイパスされてしまいます。
OBDポートハッキング(別名:電子リプログラミング) は、イタリア、フランス、英国で広く見られる手法です。窃盗犯は車内に侵入した後、OBD-IIポートにデバイスを接続し、ブランクキーをプログラムします。数分で完了するため、配送バンやレンタカーを狙った犯行でもよく使われています。
リレーアタックは、2010年前後にパッシブキーレスエントリーシステムが普及した頃から存在する手法です。先の2つが車両ネットワークを狙うのに対し、リレーアタックは2つのデバイスを用いてキーの電波そのものを悪用します。1台目のデバイスで車の持ち主のキー信号を(壁越しでも)捕捉し、2台目のデバイスがその信号を車両まで中継し、車両に「キーが近くにある」と誤認させてドアを解錠・エンジン始動させます。西欧(フランス、英国、オランダ、イタリア)で広く普及している手口で、高級ブランド車が狙われがちです。
これら高度な盗難手口はいずれも、窃盗犯が車両に損傷を与えずに実行できるため、従来の手法では発見が難しく、自動車オーナーの不満やブランド評価や信頼毀損につながる可能性があります。
PlaxidityX vDome:キーレス車両盗難と戦うための自動車メーカー向けソリューション
vDomeは、AIを活用した車両盗難防止ソフトウェアで、CANインジェクション、キーフォブの複製、不正なセキュリティ設定の操作など、サイバー手口による自動車盗難から車両を保護します。特許取得済みの独自技術と自動車サイバーセキュリティの専門知識を基盤に、vDomeはリアルタイムで盗難の試みを検知・防御し、ほぼゼロに近い誤検知率と高い精度を両立しています。また、攻撃に使用された具体的なツールや手口の特定など、豊富なインシデント情報を提供し、車両が盗まれる前に即座に適切な防止アクションを実行します。
多くの自動車メーカーは、盗難車両の追跡や回収を目的としたコネクテッドサービスを提供していますが、「盗難を未然に防ぐ」サービスは提供していません。vDomeは、市場で初めて、すでに路上を走っている車両を対象に、サイバー手口による車両盗難を“未然に防ぐ”ために設計された唯一の製品です。盗難後の回収を目指す従来型のアプローチとは異なり、vDomeは「盗まれない状態」をつくることに特化しています。
vDomeの特許技術とAIで実現する多層防御アプローチ
PlaxidityX が長年培ってきた自動車アーキテクチャ、プロトコル、標準規格に関する深い知見と、サイバーセキュリティの専門性をもとに、vDome は多層的で多角的なアプローチを採用し、車両のライフサイクル全体にわたる包括的な盗難防止を実現します。
1. 検知
vDome は、CANインジェクションなどの不正な車両ネットワーク操作や、キーの複製のような不正なキー登録行為などの車両盗難の試行をリアルタイムで検知します。多様な既知の攻撃ベクトルに対応した攻撃シグネチャを用いることで、高精度な脅威検知を実現しています。
2. 防御
攻撃を検知すると、vDome は即座にアクションを起こし、攻撃をリアルタイムで阻止します。CANバスに接続し、通信をリアルタイムで監視、攻撃を検知した瞬間に偽メッセージの送信を無効化します。この検知と防御はCANメッセージの1フレーム(200ミリ秒以内)の時間内で行われ、手早く行われるサイバー攻撃を止めるために不可欠です。
3. アダプティブシールド
vDome は OTA などを通じて継続的に更新され、新たな攻撃手法や脅威に対して常に検知性能を向上させます。10〜15年と長期間使用される車両において、未来を見据えたこの防御アプローチは非常に重要です。脅威インテリジェンス機能により、車両は多様な情報源から実際の脅威データを自動収集・分析し、より高度な防御へと進化し続けることができます。
最新の盗難手口を無力化する
vDome の独自技術は、フランス、イタリア、英国をはじめ、キーレス車両盗難が急増する地域で高リスク車両を保護するために最適なソリューションです。特に、イモビライザーや電子ロック、アラームシステムをバイパスしてしまう攻撃であるCANバスインジェクションやキーフォブの複製といった高度な手口を検知・防御するよう設計されています。キーレス盗難に対する車両保護のあり方を一変させるこの機能は、2025年のCLEPA Innovation Awardsにおいて高く評価され、PlaxidityX は デジタル部門のTop SME Innovatorに選出されました。
さらに vDome は、最新の盗難対策に対応していない旧式技術の人気車種でも、セキュリティレベルを大きく引き上げることができます。アフターマーケット向けの盗難防止ソリューションとして、vDomeは継続生産車への後付けオプションを提供し、最小限のハードウェア変更で車両の脆弱性を大幅に削減します。
盗難防止サービス(Theft Protection as a Service)
盗難防止は、自動車メーカーやサービスプロバイダーにとって新たな収益機会となり得る領域です。欧州をはじめ世界各地で車両盗難対策の需要が急速に高まる中、vDome を活用することで、自動車メーカーは月額制のプレミアムサービスとして盗難防止サービスを提供でき、これまで「コスト」と見なされていた領域を収益源へと転換することが可能になります。
例として、PlaxidityX は最近、世界有数の車両安全・セキュリティソリューション企業であるVodafone Automotiveとパートナーシップを締結しました。この協業では、急増するサイバーを悪用したキーレス自動車盗難に対応するため、vDome の高度な盗難防止機能を Vodafone Automotive の先進的な盗難防止・盗難ケアソリューションに統合しています。この共同ソリューションにより、およそ20万件の契約車両を高度な脅威から保護し、車両オーナーに安心感と安全なドライブ体験を提供することを期待されています。
車両セキュリティの未来
欧州の自動車盗難は、件数の急増と手口の高度化が同時に進行する危機的状況にあります。サイバー技術を駆使した新たな盗難手法に対抗するには、従来のアプローチでは不十分であり、先回りした、適応型で、知能的な“未然防止”の仕組みが不可欠です。
PlaxidityX vDomeは、ヨーロッパだけでなく世界各地で広がるキーレス車両盗難との戦いにおいて、状況を一変させる存在です。次世代型の盗難防止ソリューションとして、vDome はコネクテッドカーを狙うテクノロジー起点の新たな自動車サイバー犯罪に対し、大きな前進をもたらす画期的なシステムです。
キーレス車両盗難を“未然に防ぐ”ため、自動車メーカーやサービスプロバイダーの皆様にvDome がどのように役立つかを詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
執筆:2025年12月01日